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第1回「潜在意識と景観」
市立前橋工科大学大学院教授、地域研究開発センター長 ペリーが日本にやって来たとき、ここは何と美しいところだ、と言ったそうです。当時、日本の町は、木々の緑に甍の波、石畳に漆喰の壁、武家屋敷街、商家街、町屋街など土地の用途区分も極めて明確で、色彩上も統一的な景観が形成されておりました。人々は、自主的に「町式目」によって、その町並みを保守していました。 古地図を見ると良く分かりますが、日本ではどの町も、江戸期まで、都市機能をしっかり持った、そぞろ歩きが楽しめる公園都市であったのです。 全体が一つの秩序をもってそろっている時、私たちはそれに美と快を感じます。ヴェルトハイマーやムーン、ビルツホフは、一つの視対象として美しく見える形態の特徴は、似ているモノの集合や幾何学模様の連続、意味を持つ大きなモノと小さなモノの対比、そして、これらの複合にある、と分析しています。 ヨーロッパでは、中央にカテドラルなど町のシンボルになる建物を建て、その周りに低層の建物を、大まかにせよ高さや大きさをそろえ、屋根の形や色を統一して(類似則)配置しています。日本でも、お城やお寺の周りに低層の建物を類似則で配置(対比則)していました。以前実施した建設省のHOPE計画で成功したところでは、おおむね、類似則で町並みの整備が行われました。ついでですが、大化改新のころの条理、それ以降の条房に見るように、日本のどの町も街道から少し入ったところで、碁盤目に道路を通していました。遠い昔、アリストテレスは道路を碁盤目に配する利点を説明しています。 私たちは整然とした天体の運行の中にいます。私たちは、一定の秩序の中にいてこそ、美と快を感じるように造られている、言い換えれば、そのように私たちの潜在意識にインプットされている(遺伝子上の情報)のです。 他方、天竜杉や岩手の赤松、あるいは大谷石など地域で産出する素材、いわゆる地場産材料は、その地域における景観材料として極めて有効です。このことは、人の潜在意識調査の一手法である、オズグッドが開発した官能検査(SD法)によっても確認できます。地場産材料は、その地域で親しまれ、風雪に耐え、人々はその性質に精通しています。それを使うことによって、地域の特色を出すことができます。地域の活性化は地場産材料の使用から、とも言えるでしょう。 色彩計画も含めて、こうした人の潜在意識に沿った計画によって町並み景観を整備することが望まれます。
<風土に合った材料を>
地場産材料をファサードに使う
地場産材をフェンス等に用いる
風雪に耐える、風雪を刻む
将来の変化に対応
地場産材料を舗道に用いる
(樫野紀元『美しい環境をつくる建築材料の話』彩国社より)
2006年2月14日付『建設通信新聞』より
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