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系統的に作成した設計案の一部
2005年10月26日付『建設通信新聞』より
第10回「色彩設計案の作成」

財団法人日本色彩研究所 赤木重文 

 色彩設計コンセプトに沿って、具体的な色彩設計案を作成するステップは、色彩計画のフローの中でも最も重要な作業になります。ここで行う色彩デザインの制作が景観色彩計画の最終的なアウトプットの原型になるからです。

 色彩設計案の作成とは、色彩設計コンセプトに沿って具体的な色彩を選定し、さらに形状、大きさ、レイアウトなどを検討し、色彩デザインを制作する行為です。色彩設計コンセプトによって色彩の方向性はおおむね決定していますから、その範囲の中で景観設計コンセプトの実現に最も効果的な配色を検討します。コンセプトが具体的に狭い範囲の色彩を示し、その効果による達成目標も明確に指示していれば、カラーバリエーションの作成は必要なく(というよりも多くのカラーバリエーションが作れないのですが)、1案ないしは2案に集中して制作します。コンセプトがキーワードだけで設定されているような場合は、多くの配色バリエーション制作が可能ですが、できるだけ系統的に色を組み合わせて色彩設計案を制作しておき、それぞれの設計案の効果はこの後のステップである評価調査の結果を見て判断します。系統的に製作された数種類の色彩設計案と評価調査の結果を対照させることによって、色彩と評価の関係が明らかになるので、設計案の絞り込みは容易になります。また、1−2案に集中して制作した設計案の評価調査は、設計案の修正に活用できる詳細な意見を聴取するため、インタビューのような調査手法を取る場合が多くなります。

 遠景におけるコンセプトを達成するための色彩設計案の制作は、背景景観に対する屋根や主壁の見えを検討していく作業ですから、背景景観の特徴が現地調査によって把握できていれば、意外とスムーズに進行します。

 中景や近景になると、コンセプトにはより具体的なイメージを挙げるケースも増えてきます。遠景のコンセプトから優先的に絞り込まれた屋根や主壁の色に対して、中景や近景におけるイメージコンセプトを目標にして各部位の色彩を選定していきます。

 そのとき、デザイナーに必要な技能は、求められるイメージを的確に色の組み合わせによって実現できる能力です。この能力は、多くの配色を経験することによって培われていきますが、無限に近い配色のすべてを体験することは不可能です。カラーシステムを利用して、代表色を系統的に組み合わせると、配色の全貌を俯瞰することができます。その事例を目で確認し自分なりのイメージデータをストックしておくと、色彩デザイン制作の場面で活用できます。

 ここでは、「色彩の系統性」ということばを何度も使いましたが、色彩の特徴の一つとしてカラーシステムに見られるような系統性があげられます。これまでの色彩デザイン制作では、デザイナーが恣意的に色彩を選定し試行錯誤していました。色彩の特徴を生かしたデザイン制作の最も大切なポイントは、色の選定や配色で迷うときは、系統的に迷うということです。系統的に試行錯誤することにより、その経験がデータの蓄積になります。

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