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カラーイメージ立体
注:印象は対象物の種類によって図の垂直方向で変化するので、色名は評価軸(1)と(2)の平面にプロットした
2005年10月13日付『建設通信新聞』より
第5回「色彩心理効果」

財団法人日本色彩研究所 名取和幸

 碁石の白と黒では、白の方が若干小さく作られていることをご存知でしょうか。白のように明るい色は、実際よりも大きく見える性質があります。そこで白と黒が同じ大きさに見えるように白い方を少し小さくしているのです。また、色によって見かけの距離も変わります。近くに見える色は進出色と呼ばれ、赤、オレンジ、黄色など、暖色系の色が該当します。青などの寒色系の色は遠くにあるように見え、後退色といいます。こうした色の視覚的な印象への効果は、さまざまな色彩設計に必要とされる色の基礎知識です。

〈色の感情効果〉
 景観の色を検討する時に、より重要な心理効果は、色の感情効果でしょう。

 色には暖かい、冷たいという印象がありますし、やわらかい色や硬い色、軽い色に重たい色など、手や身体によってとらえることができる触覚的な印象が感じられます。色の寒暖は色合い(色相)との関係が非常に深いのですが、同じ黄色でも、赤みを帯びると暖かい黄色に、緑みを帯びると冷たい黄色に感じられるというように、赤黄緑青はそれぞれ中心の色相からのズレによって、ウォームな印象とクールな印象が生まれます。赤にも冷たい印象の赤があり、青にも暖かい青があるということです。やわらかい雰囲気は、淡いパステル調の色で、かつ暖色系であると強く感じられます。硬い印象は、暗い色調の寒色系の色になります。軽快な印象は、明度が高い色に強く、重厚さは明度を抑えた色ほど強まります。

 さらに色には、楽しい、寂しい、落ち着く、心地よいなどの、感情的な印象を引き起こす力があります。また、色はさまざまなものを連想させます。連想語データは色彩計画に有効な情報です。

〈カラーイメージ立体〉
 色はさまざまな印象を作りますが、大きくは、次の3つの側面からによることが明らかになっています。色の印象は3つの心理的な基準から評価されているのです。1つは、感じの良さ。「好き」「嫌い」や、美醜などのように、「いいなぁ」「イヤだなぁ」という評価軸で、心理的価値の高低からのチェックです。専門用語では、色の「評価性」といいます。2つ目は、暖かく派手な感じなのか、冷たく地味な印象なのかの基準です。色から受ける迫力や躍動感に関するチェックで、色の「活動性」と呼ばれます。3番目は、強くて硬い印象か、ふんわりと軽やかかというもの。色の中に込められた潜在的な力の大きさの大小のことで、色の「潜在性」といいます。

 同じ色であっても、カラーカードで見た場合と建物外壁の場合とでは心理評価に違いが生じます。世界中の人が最も好む色は青ですが、ビビッドブルーの建物が最も好まれるとはとても考えられません。

 図は、色が作り出す印象空間を模式的に示したものです。対象の種類が異なると、印象の変化は図の立体の垂直方向(評価性の方向)について主に起こり、明るく開放的な印象か(評価軸(1):潜在性)、暖かみがあるか(評価軸(2):活動性)の位置はそれほど変化しません。

 実際の建築外観の印象は、色および配色、規模、形、素材、仕上げテクスチャなど、それらすべてが絡み合って作られますので、心理効果を総合的にみることが大事です。色にしても、そもそも色は1色だけで存在することはありません。ある色を背景として、あるいはある色と組み合わされて存在します。その話は明日の担当者にバトンタッチします。

 街並み景観にまとまりを持たせたい時。直接、色の種類に目を向けるだけでなく、色の心理効果に着目してみてはいかがでしょうか。

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