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第1回「環境と色彩」
財団法人日本色彩研究所 赤木重文 この連載の執筆者は日本色彩研究所のメンバーですが、「色彩だけを研究する組織って、具体的に何をしているの?」という質問を、私達はよく受けます。そこで、第1回の紙面をお借りして、日本色彩研究所の紹介をさせて頂きます。 昭和2年(1927年)に当研究所の前身である日本標準色協会が創立されました。創立者の和田三造画伯がヨーロッパ遊学中に見聞きした当地の色彩事情は驚きの連続であったようで、そこからヨーロッパと日本の色に関する素養や教育の相違を感じたのでしょう。帰国後協会を設立し、戦後すぐに財団法人日本色彩研究所として改組しています。 当研究所の研究業務は、現在2つの柱があります。一つは色彩管理に関する研究業務です。これまで培ってきた色の標準化における色票製作技術や測色学に基づく色彩管理の研究によって、個々の色や複数の色の関係を体系的で客観的に表すことができるようになり、その手法は現在も改良が進められています。 もう一つは、色彩計画に関する研究業務です。日用品から居住や就労環境さらに都市景観まで、身の回りの環境を構成する様々な色彩について、実態調査や分析そして設計手法の 開発研究を行い、市場のニーズにそった商品開発や快適環境の創造を支援しています。今回の連載「景観と色彩」は、この研究業務の事例をもとに、景観にスポットをあてて色彩計画の要点について紹介するものですが、色彩管理に関する研究成果も現在の色彩計画に欠かすことのできないツールになっています。 通常、色彩検討の対象となるものは、私的所有物から公共性の高いものまで広い範囲に及びます。そこに付随する色彩は私たちの感覚に直接働きかけて、ものや環境の印象を左右します。また印象のような心理的効果だけではなく、物の存在の認められ易さや識別のし易さなど視覚的な性能に関する効果もあります。したがって、ものや環境の設計にあたっては、これらの効果を十分に活用した色彩が選定されます。設計対象物やコンセプトによって、優先させる色彩効果の内容が異なってきますが、これはデザイン分野の違いにも表れてきます。ファッション、グラフィック、プロダクト、インテリア、景観など様々な分野で色彩がデザイン構成要素となりますが、色彩に求める役割はそれぞれ異なっています。ただ、一つの分野で制作されたデザインでも、他の分野の制作デザインと侵蝕し合うケースは決して少なくありません。例えば、グラフィックデザインの現場で制作された企業のロゴマークが屋外看板として現れたとき、それは景観の構成要素にもなります。一つの分野を専門とするデザイナーであっても、他の分野のデザイン設計における色彩の扱い方について十分な知識を持つ必要があります。共通の要素である色彩によって各デザイン分野をつなぎ、総合的な視環境を形成していくという認識が今後ますます重要になります。当研究所ではコンサルティング業務の一環としてとして、デザイン教育における色彩教育の提言を行なっていますが、このようなメッセージも教育現場に向けて発信しているところです。
統一した屋根の色によって良好な景観が眺望できるミュンヘン
日本有数の神社の境内から門前町を眺望した景観。屋外広告物のあり方が問われる。
2005年10月4日付『建設通信新聞』より
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