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私の景観論

 2005年5月9日、全国初の景観整備機構として京都市から指定を受けた京都市景観・まちづくりセンター。住民主体のまちづくり・景観づくりを推進する景観整備機構のトップランナーにふさわしい成果を達成するため、さまざまな効果的な事業を展開している。また、今秋9月1日から京都市の新景観政策がスタートし、景観・まちづくりは歴史的転換期を迎える。京都の都市景観への取り組みは、国の景観法のモデルにもなっただけに、改めて牽引者としての力量が問われることになり、全国的にも注目が集まっている。同市を全面的に支援し、市民・事業者と行政の掛け橋となり、一層のコラボレーションを誘導する同センターの三村浩史理事長に、センターの役割、景観政策への取り組みなどについて聞いた。

◇     ◇

 同センターは、1997年10月に京都市が設立した。市民・企業・行政が協働して参画するパートナーシップによるまちづくりを推進し、京都らしい景観の保全・創造、質の高い住環境の形成などに取り組んできており、ことし10月には設立10周年を迎える。

 景観整備機構としては、(1)良好な景観の形成に関する専門家の派遣、情報提供、相談その他の援助(2)管理協定に基づく景観重要建造物の管理(3)良好な景観の形成に関する調査研究(4)良好な景観形成を促進するために必要な啓発事業などに取り組んでいる。

■保全・創造のためにプラスの規制設定
 「京都の景観論争は昔からつきもので、その景観政策は、古くは明治時代から取り組まれてきた。近年では、72年に市街地景観条例が全国に先駆けて制定されるなど、景観整備制度の充実が図られてきた。しかし、バブル期の規制緩和で、そのフレームでは十分に対応することができなくなってしまった。その反省から、景観政策をリセットするとともに、プラスαの規制を設けることになった。言うなれば、景観を保全・創造するための新しいフレームが再構築されたということだ」

 京都市は9月から新しい景観政策を施行することになっている。それによって再構築された新しいフレームによる景観政策の実践に役立つ啓発や事業の一端を、同センターが担うことになる。

■市民と行政の橋渡し世界にも情報発信
 「景観を創造していく原動力となる市民・事業者と、行政の橋渡し役となり、その活動を支える『要』となる。情報提供や事業支援、まちづくり・景観づくりを日本だけでなく世界に発信していきたい」

 これまでの活動成果として象徴的なものに、京町家まちづくりファンドの創設がある。伝統的な京町家の町並みを保存し、それを生かしたまちづくりのため、全国から集めた寄付金の運用益を改修助成に充てるもので、06年度から助成事業を始め、これまでに7件の改修実績がある。

 「こうした京町家の町並みを始め世界文化遺産周辺の伝統的建造物群なども含め、どのように保存を支援していくかが大切。これらの要素で構成されている『まち』は生き物であるので、『動態的保存』という観点が欠かせない。また、保存だけでなく、防災上の問題から現代的なハイブリッドな技術を駆使する『再生的保存』という側面も必要だ」

 「新景観政策の施行後は、景観を市民の生活などの営みが溶け込んだ風景にしていくことが大切で、その美しさによるまちづくりが最終的な目標となる。それは、姿・形と心をひとつにすることだ。優れた景観に、市民の生活、四季の移ろい、祭り、家のしつらえなどが溶け込むことで始めて風景となる。だから、住み手がいるかどうかということが鍵を握る。保存しても、住み手がいなければ意味がない」

■まちが復元力備え持続的に発展する
 そのためにも、NPO(非営利組織)団体などと協力し、地域力という、うねりのようなエネルギーを貯えられるまちづくりを展開していく考えだ。「それにより、『まち』自体が復元力・創造力を備えることになり、『まち』が生き物として持続的に発展していく」

2007年7月26日付『建設通信新聞』より

営みを風景に
その美しさでまちづくり
京町家まちづくりファンドの助成物件例(外観などを改修)
京都市景観・まちづくりセンター理事長
三村浩史
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-13-7 名古路ビル本館
(c) 2007 NPO法人 美し国づくり協会
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