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私の景観論

 ことし2月、富山市は中心市街地活性化法に基づき青森市と並んで、中心市街地活性化基本計画が国の第1号認定を受けた。昨春には国内で初の本格的LRT(超低床路面電車)、富山ライトレールを開業させた。同市が中活化基本計画でも打ち出している「公共交通を骨格とするコンパクトなまちづくり」を進める背景には、車社会の進展で市街地が拡散してしまった都市構造がある。同計画に盛り込まれている事業には既に実施段階に入っているものもあり、減少の一途をたどってきた中心市街地の人口が昨年、43年ぶりに増加に転じるなど一部でその効果が現れ始めている。2002年の就任後、少子高齢社会の本格到来を睨んだまちづくりに意欲的に取り組んでいる森雅志市長に聞いた。

◇     ◇

 富山市は世帯当たりの車保有台数、道路整備率ともに全国トップクラスで、完全な車社会だ。モータリゼーションは不可避的に拡散型の都市構造をもたらした。

 「ところが、ふと気付くと一人暮らしの高齢者や高齢者だけの世帯が増え車に依存できなくなってきた。加えて除雪の延長やごみの収集、公園や下水道の維持管理など、行政コストも非効率になっていく。人口減少時代を迎え、なおさらだ」

 旗印としての「コンパクトなまちづくり」はしかし、「現在、まちはすでに薄く広く広がっているわけだから、それを再凝集するとか、居住を期待する地域が中心にあってインナー、ミッド、アウトといったふうにゾーニングしていく発想は現実的でない。むしろ郊外に住んでいてもいいけれど郊外から都心部に出やすくしよう、そのために密度の濃いバス路線と質の良い鉄軌道を整備していこうということです」

■恵まれた鉄軌道の密度と質を高める
 幸い、富山駅には北陸本線、高山本線、富山港線、私鉄2本、それに市電が結節し、2014年には北陸新幹線も乗り入れる。「この恵まれた鉄軌道に着目し質を高めていけば電停や駅周辺に住んでいる人のアクセスビリティが高まり、中心部に公共投資を拠点化していくことによって郊外に住んでいても十分使える」。その第1弾が昨年、JRから富山港線を引き継いで開業した富山ライトレールだ。

 「陥りがちな第三セクターの赤字経営にさせないため」、事業方式は公設民営とし、地元の私鉄からスタッフを採用し運行頻度もアップ、電停も新たにつくった。結果、開業前(富山港線時)に1日2200人だった利用客が4900人に増加するなど、運行は極めて順調だ。さらに沿線にデイサービスセンターをつくる動きや障害者のグループホーム、高齢者向け賃貸住宅計画が出てくるなど関連投資も芽生えてきたという。「(富山ライトレール開業を)まちづくりにつなげるという狙いもあったから非常に期待している」

 3年後には既存の市電を延伸させて町の中心部に路面電車のループを形成、14年の新幹線開業に伴う駅高架でライトレールとこの路面電車を繋げば、郊外のあちこちから都心部に出てきやすくなる都市構造がおおむね出来上がると見据えている。

 一方、都心居住への助成制度も05年度から開始した。住宅建設やマンション購入への補助のほか、賃貸住宅でも月額1万円を3年間補助している。結果、昨年9月末データでは1963年以降減少を続けていた中心市街地の人口が増加に転じた。

 こうした公共交通の利便性の向上とまちなか居住の推進に、賑わい拠点の創出を加えた3本柱で市の中活化基本計画は組み立てられている。

■少子高齢化見越してまちづくりをシフト
 「確かに、車があればまだ10年先くらいまでは大丈夫だと思います。しかし20年、30年先になれば、交通弱者にとって暮らしにくいまちとなり、行政コストも負担人口が減るのに増えていくという事態に陥るのは目に見えています。これまでのまちづくりをシフトしていかねばならないのは自明でしょう」

 7市町村が合併、海抜ゼロmから3000mの1240km2という広大な新富山市が誕生して2年。「景観という点でも、旧町村全体のバランスに配慮し、都心部の質を高めながらそこに緩やかに誘導していくという手法で進めていきたい」

2007年6月12日付『建設通信新聞』より

公共交通軸に
コンパクトシティ形成
呉羽山展望台からは北アルプス・立山連峰に抱かれた富山市街が一望できる
富山市長 森 雅志
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