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私の景観論

 松尾芭蕉が著した紀行本『奥の細道』の「むすびの地」となる岐阜県大垣市は、豊富な自然の水と緑、大垣城を中心とする城下町、旧美濃路や旧中山道を中心に発展した宿場町、そしてIT関連企業などが集積するソフトピアジャパン地域と、いろいろな顔を持つ地区が存在する。小川敏市長は「水を生かし、時代が変わっても変わらない特有のまちをつくりたい」と語る。

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 同市は2006年3月27日に、上石津町、墨俣町を合併して、新たなスタートを切った。市内には一級河川20本が縦横に走り、また、木曽川の伏流水が自噴水として湧き出すほどの“水の都”であることに加え、今回の合併によって森林地帯の占める面積割合は、それまでの5%から53%に達し、まさに「水と緑」の都市に変貌した。

■景観は特有の個性に営みが加わったもの
 小川市長は、景観を「その地区の特有の個性を持った自然、歴史、文化を生かし、そこに人の営みが加わったもの」だと定義しつつ、「これから、社会が発展するのに伴って、住民の景観に対するニーズは、ますます高まる」と予測。さらに「最初は衣食住が足りればいい。次に安全で安心して暮らせるまちに、さらに住民の満足度が高まれば、視覚に訴えるまちづくりという方向になってくる」と見通す。

 同市が掲げる景観まちづくりの方針では、「水と緑に彩られた、潤いのある生活空間」「歴史と文化に育まれ、城下町、宿場町の風情を感じる空間」「賑わいと憩いが調和した、観光交流空間」の3つをつくることが挙げられている。各ゾーンの共通項としては、美濃路大垣宿のPR充実、山車だし・山車蔵をまちづくりに生かす取り組みの充実、路地(裏道)の整備、旗・街灯・植栽など美濃路沿道の統一感の演出強化などを実施する。

 また、具体的なプロジェクトとして「四季の里整備構想」と「大垣駅北口広場整備」を挙げる。「四季の里整備構想」は、各地区の一定規模以上の公園を対象に「1年中、どこかの公園で花が満開の状態」にする構想である。

 「1月から12月まで、毎月何の花にするかを決め、どこかの公園で旬の花が十分見られる」ことをめざす。「公園はとかく、地域のものになりがちだが、それを市民全体のものにすることで、有効活用が図れる」という発想によるものだ。

 一方の「北口広場整備」は、これまでのJR大垣駅南側中心だった開発を、大規模商業施設や病院が建てられる北側の工場跡地も有効利用し、あわせて南北自由通路を設けることで、南北一体的なまちづくりをするというもの。快適な公共空間整備事業の一環として事業着手した。

 歴史的な面では、NPO(特定非営利法人)によって、美濃路大垣宿の復元に向けた努力が進んでいる。来年度には、今後のまちづくり計画を策定する予定で、市側としても助成措置を講じる考えでいる。「市民主体で進めてもらい、行政はそのバックアップをするという体制をとる」方針だ。

 あわせて、市のシンボルである大垣城も「城郭整備ドリーム構想」によって再整備される予定になっている。現在の城は、59年に鉄筋コンクリートで復元された。それが「かなり老朽化した」ことから、周辺整備も含め、昔の姿を取り戻そうというものだ。そのために市民検討委員会を立ち上げ、基本計画案がまとめられて提言された。

■自然、歴史、ITのダイナミックシティ
 豊かな自然環境と歴史的な格式の高いまち並み、それとは別に、既存産業の高度化の進展と、IT産業やロボット産業、宇宙産業などの新産業が集積するまちと、同市の中には多様な空間が生まれつつある。そうした状況下で小川市長は「ダイナミックシティ大垣」構想を打ち出す。

 自噴水を生かした「水と緑の回廊」の整備、歴史と文化に彩られたまち並みの復活、そして最先端産業が集積するまちなど、多彩な表情を持つ同市。その特徴を最大限活用しつつ「メリハリのあるまちづくりをしていきたい」と意欲を示す。

2006年11月6日付『建設通信新聞』より

時代が変わっても
変わらないまちづくり
大垣市長 小川 敏
水嶺湖の湖畔にある「日本昭和音楽村」。水と緑が調和し、人気の景観スポットになっている
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