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私の景観論

 回遊性の高い商業地域のある吉祥寺駅周辺が有名な東京都武蔵野市。邑上守正市長は、成蹊学園のけやき並木などを挙げながらも「街並みという観点でこれまで市民がこれぞと思うような守るべき景観というものがなかった」と認識している。景観行政団体への移行をめざす上でも「これから創っていかないといけない」と考える邑上市長に景観とまちづくりを聞いた。

◇     ◇

 市長に就任してから1年が経った。以前は都市プランナーで、「平成元年(1989年)頃には藤沢市などで景観条例制定のお手伝いをしてきた。景観というのは、これから都市をつくる上での大きなキーワードであるとして認識してきた」と語る。

 武蔵野市は「伝統的に要綱行政でそれなりにまちづくりを進め、そのため開発ごとに個別対応ではあったものの、公開空地など指導行政により一定のまちづくりはしてきた」と分析する。だが、「それだけでは完ぺきではない。そこでまず必要なのは、まちづくり条例を制定しようじゃないか」と考えた。

■取組み方法を条例に基づきコントロール
 地域での開発については「大いに地域の方に事前にお知らせしてほしい。計画が固まる前に協議ができるようなまちづくりのシステムを庁内で検討してもらっている」という。「今年から来年にかけて条例化していく。これによりまちづくりの取り組み方法を規定できる。条例に基づいたコントロールをきちんとしていく」考えだ。

 さらに景観行政団体への移行もめざしている。「景観法が昨年6月に施行された。市も早く景観行政団体に手を挙げようとしていたが、東京都がきちんとした考えをまとめた上で認めていくやり方になっている」。玉川上水など「広域的なものは都がやるべきだが、市にもっと任せてほしい。都には市同士で調整が必要な時に手伝っていただきたい」と語る。

 ただ一方で、「武蔵野市は市域も狭く、山や川などの自然もない」。市内の景観3景も「緑で言えば、成蹊学園のけやき並木や市役所前の中央通りの桜並木、玉川上水沿いの緑地」と挙げるものの、「これらは緑が中心で、沿道のまちづくりとは一体的ではない」。どうしても「地域の方が参加してこないと本物のまちづくりにならない」とする。

 「緑が多いから守るという環境に対する意識はあるが、国立駅南側の並木通り(大学通り)のような市民がこれぞと思うような守るべき景観があまりなかったのでは」とみる。だからこそ「これからは景観計画をつくる中で景観に対する考えをきちんと示していかないといけない。市民参加でぜひやっていきたい」と強調する。

■景観の美しさと市民の安全は連動
 景観と安全は連動する考えをみせる。「安全なまちは景観も美しい。ニューヨーク市でも落書きをなくして治安が良くなった。市民が地域に気配りをすれば、いかがわしい人が寄りつかないから治安も上がる」という。

 「景観的に整ったきちんとしたまちでないといいまちとは言えない。美しさと安全は一致する。あらゆる面で都市づくりが健全なら自ずといい街並みとなっていくという信念を持っている」。とくに「電線の地中化を積極的に取り組んでいきたい」

■笑顔が行き交う魅力的な景観づくり
 「景観づくりは、そこで活動する人々も大きなイメージをもつ。多くの市民が笑顔で行き交う魅力的な景観づくりを進めたい」と考える。

 景観形成はこれからとは言いながらも、最後に武蔵境駅南口の桜並木(境南通り)の木製ガードレールの例を挙げた。「デコボコだったから間伐材を使った本物の木製にした。環境にマッチしており、人にやさしい表現ができたのではないか。これから武蔵野の景観を進める一つのきっかけになるのでは」とみる。

2006年10月16日付『建設通信新聞』より

健全な都市づくりが
良い街並みになっていく
武蔵野市長 邑上守正
武蔵境駅南口の桜並木(境南通り)に設置されている間伐材でできたガードレール
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