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私の景観論

 東京湾と相模湾に囲まれ、豊富な緑に恵まれる横須賀市は、ひと口に首都圏という位置にあっても、横浜市や川崎市とは景観資源の状況が異なる。さらに、ペリー提督が来航(浦賀沖)した歴史都市でもある。こうした景観資源をどう守り、生かしながら活力のあるまちづくりを進めていくか。景観行政に積極的な取り組みを見せる横須賀市にとって、ここがポイントになる。

◇     ◇

 景観に取り組む理念として「横須賀は首都圏でも自然の緑が比較的残っている貴重な都市であり、財産として残したい。これは大原則。そして歴史。1853年にペリー提督が浦賀沖に来航して、近代日本が始まった、いわば開国のまち。その歴史性を意識して取り組んでいけたらいいと思う。また、横須賀は三方を海で囲まれ、多彩な海岸線、湾をもっている。これを生かした景観というのがあるのではないか」とする。

■海と緑の散歩道プロムナード構想
 たとえば横須賀の歴史と自然を生かした「1万mプロムナード構想」がある。JR横須賀駅から観音崎までの約10?、その1万mを「海と緑を見ながらの散歩道としてつなげたい」というものだ。単に遊歩道をつくるのではなく、適所適所に公園などを配置したり、終点には観音崎公園の公園施設としても位置づけられている市立美術館が、2007年のオープンを目指して現在建設されている。

 視点を変えると「プロムナードを軸としたまちづくり」であり、JR横須賀駅の駅前をプロムナードの出発点に相応しい駅前広場にする準備も進めている。駅前広場に隣接する公園はヴェルニー公園として整備され、歴史を生かした公園に生まれ変わった。その南には三笠公園、そして近年、埋立により新たにできた街並みや海辺の公園が続く。その先の馬堀海岸には数?にわたって椰子(フェニックス)が植えられプロムナードを演出している。これは、国の高潮対策事業に伴い植えられた。

 また、JR横須賀駅に隣接するウェルシティからヴェルニー公園、そして京急汐入駅周辺までの約20haが、日本の都市景観100選に選ばれている。

 もう1つ、最近、浦賀における住友重機械工業浦賀工場が閉鎖になった。「市経済としてはマイナスだが、市民が湾にアクセスできる可能性が生まれたという点ではプラス。湾が市民の目に直接飛び込んでくることになる。これから跡地の再開発ということになると思うが、歴史と湾を生かした、横須賀に相応しい再開発をして欲しい」との思いがある。

 3つ目は「海から見る景観が横須賀の魅力。東京や川崎、横浜と異なり、横須賀の方に来ると、自然や緑がぐっと広がってくる。この自然景観を沿岸から船でクルーズして見ることができればと考えている」そうだ。

 ただし、ひと口に自然を残すと言っても「法律に基づく正当な手続きを経れば、開発が行われることになる。行政としても認めざるを得ない。しかし、開発するなら、いろいろ工夫して、自然を生かしたかたちでの開発をお願いしたい」とも。自然の保存・保護と開発をどう調整するか。自然が豊かであるからこそ、その悩みは大きい。

■色彩の専門家招き街並み調和を誘導
 だからこそ「横須賀市では景観ということに関心をもって取り組んできている」

 たとえば、色彩や都市デザインなどの専門家を委員に招き、建物のデザインや色彩を街並みに調和するよう誘導している。最近では「景観法を先取りする格好で、景観条例を策定した」。横須賀市の都市環境の整備、改善及び保全並びに文化創造の一翼を担う景観づくりについて必要な事項を定めることにより、個性豊かな美しい景色を形成することを目的とするものだ。

 条例は、建築物等の外観の基調色の基準を設定して強制力をもたせたのが特徴の1つ。もう1つユニークな点は、眺望。「現在、東京湾や猿島を望む丘の上にある中央公園内に眺望点を指定、ここから海をみる眺望を保全するために、眺望の妨げになる高さの建物は建設を制限している」という。

2006年6月6日付『建設通信新聞』より

自然生かし
「開国のまち」意識して取り組む
横須賀市長 蒲谷亮一
「日本の都市景観100選」に選ばれた横須賀港周辺地区。沖合いには、東京湾に浮かぶ唯一の無人島・猿島が見える
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