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私の景観論

 1992年に政令指定都市となった千葉市は、首都圏の大都市の中でも緑や水辺といった自然資源に恵まれている。JR千葉駅を中心とした千葉都心、企業やコンベンション施設などが集積し先進性・国際性に富んだ幕張新都心、第3の都心として整備が進められている蘇我副都心など、活力に満ちた都市の顔を持つ一方、市内には花と緑に溢れた大規模な公園や海浜公園などが充実しており“動と静”のバランスがとれた街となっている。「花の都・ちば」を都市イメージに掲げ、景観行政を積極的に展開する鶴岡啓一市長に考えを聞いた。

◇     ◇

 「1945年、二度の大空襲により中心市街地の約7割が焼け野原となった。65年ころから、東京のベッドタウンとして住宅開発が盛んになり、埋め立てで市域を拡大してきた」と、自らもその大空襲を体験し、復興から現在の姿に至るまでを見てきた鶴岡市長は、千葉市の歴史を語る。市政に携わるようになり「景観を意識し始めたのは幕張新都心の開発から」と振り返る。

■郊外の田畑を守り市街に花を増やす
 96年に都市景観条例を制定し、千葉市の表玄関である千葉駅東口から中央公園までの中央公園プロムナードを都市景観デザイン推進地区に指定した。「景観の観点からも、街づくりを進めた幕張新都心や蘇我副都心はいい街ができてきている。開発から40年近くたっている千葉都心の景観をもっと良くしたい」

 その方策として、市民や企業の協力を得て「駅前通りに並ぶ建物に壁面緑化を施し、街の雰囲気を一新したい」と、“緑の帯”の実現が夢と語る顔からは自然と笑みがこぼれる。地球温暖化やヒートアイランド現象が問題視される中、「郊外に広がる田畑や緑を守っていくとともに、市街地にも花や緑を増やしていきたい」と抱負を語る。

 また、中心市街地の中で、かつて繁華街であった「栄町を何とかしたい」という思いは強く、「市をあげて支援していく」方針だ。最近では商店街や自治会が自主的に何とかしようという動きが出てきて、再開発への機運が高まってきているという。栄町には韓国などの料理店も多く「横浜市に中華街があるように、この地域資源を生かしたまちづくりができないだろうか」とユニークな発想ものぞかせる。

 今後、景観法を活用して、景観計画の検討を進める。新たな地区指定を含め、千葉市らしい魅力ある都市景観の形成をめざしていく。

 市内の景観三景には、第一に「海岸線」を挙げる。日本初の人工海浜「いなげの浜」をはじめ、「検見川の浜」「幕張の浜」の3つの人工海浜を合わせた総延長は約4300mに上り、その長さは日本一だ。とくに浜から見た夕日は素晴らしく、晴れた日には富士山も望めるという。

 第二は、若葉区などに広がる田園風景、谷津田と斜面林が一体となった風景などの「緑」を挙げる。泉自然公園や昭和の森などは、緑豊かな空間が広がる自然の宝庫だ。

 第三は、都市的な観点から、超高層ビル群やベイタウンなどが建ち並ぶ「幕張新都心」だ。ただ、「きれいすぎることが無機質に映ることもある」と指摘する。マリンスタジアムの周辺一体をボールパークにしたいとの声も上がっており、鶴岡市長はその考えに同調する。「人が憩い、心を和ますこと、それも景観ではないか」との考えからだ。

■「蘇我副都心」はユニークな街に
 また、商業・業務・居住・公園など多様な都市機能を導入する「蘇我副都心」への期待も高い。「約300haの対象区域の整備にはあと10年かかるが、幕張新都心とは違ったユニークな街ができる」と展望する。

 千葉市の市域は、約272km2。そのうち、市街化区域は約47%で、半分以上の約53%は市街化調整区域となっている。ほかの都市に比べ「市街化調整区域が多くあること、つまり緑が豊かなことが千葉市の財産だ」と強調する。「この財産のおかげで社会情勢の変化に合わせた開発行為などにも柔軟に対応できるが、乱開発は意味がない」と言い切る。都市と自然の二つの顔を生かし、さらに、住みよい魅力あるまちづくりを推進する。

2006年5月15日付『建設通信新聞』より

壁面緑化で
駅前通りに“緑の帯”の実現
千葉市長 鶴岡啓一
人工海浜「幕張の浜」から広がる幕張新都心。大型商業施設や娯楽施設などが並び、関東近郊から訪れる人も多い
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