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埼玉県川口市ではこの春、駅前再開発「キュポ・ラ」と、サッポロビール埼玉工場跡地開発「リボンシティ」がまちびらきした。このほか高さ185mの超高層マンションなどがそびえ立ち、かつての『キューポラのある街』は、華やかな都市開発に彩られている。ただ、「住んでよかった」と市民に思われるためには「都市基盤が整い、公共施設があり、買い物に便利なだけではだめ」と岡村幸四郎市長は断言する。「いかに『生き活き』と輝いて生活でき、どれだけ精神的に充足感があるかだ」と考え、それには景観も極めて重要な要素だと位置づける。 ◇ ◇ 「欧州へ出かけると、その街並みに心の安らぎ、安心感を覚える。この点がわが国に欠けてきたことを反省すべきだ」と感じている。景観法の施行も同様の危機感の表れではないかと捉えている。 ■人づくりなくしてまちづくりなし 美観づくりには、規制だけでなく、自分たちの街は自分たちで綺麗にしていこうと思う市民の気持ちが大事だと考え、「規制と意識啓発の2本立て」を強調する。 「人づくり」は、市長就任以来、注力してきたことの一つ。「世の中が豊かになり、何か社会の役に立ちたいと考える人が増えている」ためだ。いい人が集まれば、いいまちになる、との考えから「人づくり市民運動」を展開。景観関係では、安行地区の植木産業を生かして「緑のまちづくり市民運動」を進め、生垣設置、建物の屋上・壁面緑化、緑のまちづくり地域緑化事業などを進めている。その成果として、「戸塚団地地区」が国土交通省の都市景観表彰「美しいまちなみ優秀賞」を、「西川口東口商店振興会」が緑化推進運動功労者として内閣総理大臣表彰を受賞した。 さらに、市民の「知的・文化的欲求」に応えるため、川口駅東口の再開発ビル「キュポ・ラ」に、県下最大級となる蔵書50万冊の図書館を開設。その決断には“駅前は商業施設”という固定観念を捨てた。こうした発想も「品格のある街づくりには重要」と話す。 同再開発では、容積率を使い切らずに約3000m2の広場を設けた。ホテル建設が不景気などで撤退した経緯もあるが、結果として「街に息苦しさがなく、いい場所になったのでは」と見る。過去の西口再開発では、地価の高い駅前に3.1haの公園が整備されており、こうしたゆとりが市民に安らぎを与えている。 ■産業振興なくしてまちの前進なし 景観に不可欠となっている緑化産業を支えるのは、農地だ。「農地空間を産業に絡めていかに残していくか」が課題だ。植木のほかにも浜防風ハマボウフ、山椒サンショウ、八頭ヤツガシラ、山芋ヤマイモ、茗荷ミョウガなどの隠れた名産がある。「景観はつくるものでもあり、残すのもまた景観だ」と考える。 江戸時代には日光御成街道の宿場町として栄えた。古い街並みの保存運動もあるが、人口膨張期に都市計画が追いつかず無秩序な市街地が形成された爪跡は大きく「つらいところだ」とこぼす。関東郡代を務めた伊奈家の陣屋77haも「買って残していれば…」と残念がる。陣屋跡の一部は「赤山城址」として残す。 このほか「西福寺三重塔」、ことし皇太子殿下が御視察された「木曽呂の富士塚」などの文化財も。昨年は16世紀英国の建築様式であるチューダー・ゴシック様式の洋館「旧田中徳兵衛邸」を「歴史的・文化的価値が高く、限られた財政のなかでも、公共として残さなければ」と考えて購入した。歴史遺産の保存で「市民が自分の地域の歴史を知り、誇りとして将来に残していく意識づくり」をめざしている。 2006年4月24日付『建設通信新聞』より
「生き活き」と
精神的充足感が重要
川口市長 岡村幸四郎氏
JR川口駅西口の1等地に広がる約3.1haの公園が、都市の「ゆとり」を生み出している
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