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私の景観論

 昨年、新潟市は13市町村と合併し、人口81万人を擁する都市となった。07年4月には本州日本海側初の政令指定都市に移行する。千年余りの長い歴史を持つ港町として有名だが、その発展を支えてきたのは、蒲原平野の水田地帯に他ならない。政令市移行を機に「港町と田園の両方に磨きをかけたい」と語る篠田昭市長に今後のまちづくりについて聞いた。

◇     ◇

 新潟市はいくつかの点で他の都市とは大きく異なる。農業基盤を持った田園型大都市であるという点だ。現在、政令市で食料自給率トップの都市は仙台市の8%だが、新潟市はそれを遙かに上回る61%となっている。

■かつてない新しいタイプの政令市へ
 「安全・安心の土台は食料にある。政令市となっても食料自給率を確保し、伸ばしていくことが大切だ。高次都市機能がある一方で、美しい村や美しい田園を持つ、かつてない新しいタイプの政令市をめざす」

 その実現に向け、田園とは切っても切れない関係にある潟を1つのシンボルゾーンとして位置付ける。素晴らしい田園がどのように形成されてきたかを実感できる場所とするため、ラムサール条約に登録されている佐潟などを先行整備したあと、「最大の財産である鳥屋野潟とやのがたを市民の宝にしていきたい」と力を込める。

 日本海に面しているのも他の政令市と異なる点だ。これまで本州の日本海側には政令市がなかった。新潟政令市は太平洋側に偏心している日本の在り方を見直し、急速に成長する東アジアと向き合う役割が課せられる。こうした拠点性を踏まえ、港町のオープンマインドが息づく地域整備も必要だと指摘する。

 港町の風情が薄れてきているとの声もあるが、合併前の新潟市の下町しものまち周辺には今も古い町家が残っており、「湊町の原点である下町・沼垂は街づくりの観点からも大切にしていきたい」という。既存の町家などを活用し、時間の蓄積が感じられる空間を創り出していく方針だ。

 これまでの機能優先の街づくりを見直し、今後は古いものと新しいものを上手く融合させる必要があると語る。このため、景観形成に対する取り組みに一層力を入れていく考えだ。

 具体的な取り組みとして、すでに景観条例や都市景観大賞などの制度を設けているほか、現在、学識経験者を景観アドバイザーに任命し、開発行為に対して景観に関する助言を受けるようにしている。実際に専門家の意見を踏まえ、民間事業者が計画するビルの高さなどを変更したこともある。

 万代島にある超高層建物「朱鷺ときメッセ」から見渡す信濃川の流れと沿川流域の街並み??。市長が選ぶベストビューポイントのひとつだ。水都と呼ばれる新潟だが、市内は平地で、信濃川に育まれた港などを一望できる場所がこれまでなかった。朱鷺メッセがそれを可能にしてくれた訳で、個人的にも大変気に入っているという。

 こうした思い入れもあり、景観3法を踏まえた景観計画の策定にあたっては、優先的に景観形成を進める地区として、昭和大橋から下流側の信濃川沿いと新潟駅から万代橋方面に向かう都心軸を想定している。06年度中に計画を策定する予定で、2、3年後にはその取り組みを市内全域に拡げていきたいと話す。

 街づくりに関するさまざまな施策を進めるには、限られた財源を有効に活用していくことが求められる。これには公のおおやけ部分を市民やNPOに委ねることで対応する。

■自立度高い分権型まちづくりを推進
 「行政が全てを抱え込むのではなく、市民と協働して自立度の高い分権型まちづくりを推進する。自らがめざす方向を自らが見定め、自らの能力を活用して自己実現することに喜びを感じる市民は多い」

 「大都会には失われたコミュニティーの力が新潟には残っている。街づくりに市民が主導的役割を果たしていけば、地域のまとまりや結びつきはさらに強固なものとなる。地域主権の流れを先取りする意味でも協働による街づくりを展開する」

2006年4月11日付『建設通信新聞』より

港町と田園両方に
磨きかけていく
新潟市長 篠田 昭
水都新潟を見渡すことができる朱鷺メッセからの眺め。信濃川の流れと沿川の街並みは市長のベストビューポイントのひとつ
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