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私の景観論

 わが国を代表する大都市の1つである川崎市では、新総合計画「川崎再生フロンティアプラン」の中に、「良好な都市景観形成の推進」を重要な施策の柱の1つとして盛り込んでいる。開発ポテンシャルが高い川崎市にあって、「景観」という視点からいかに誘導していくかが良好な景観形成のポイントの1つになる。その意味で、その施策は、都市における景観形成のモデルともなる。阿部孝夫川崎市長に、川崎市における「景観行政」の方針を聞いた。

◇     ◇

 川崎市は、京浜工業地帯の中核都市として発展してきた。その過程で、深刻な環境問題、人口急増による市街地の拡大という大都市特有の現象も経験してきた。これに対応するため、全国に先駆けて「公害防止条例」「環境影響評価条例」などの環境政策を積極的に展開してきている。

 逆にみると歴史的な街並み・建造物を数多く抱える都市ではないというのが川崎市の特徴になる。このため、景観形成にあたっては、「再開発などで新しい景観をつくっていくという時代に入っていると考えている」という。

■景観戦略は誘導と表彰
 その際、「行政と民間事業者の協働のもと、地域全体との調和をいかに考えるか、環境への配慮など、どういうコンセプトで新しいものをつくっていくか。その誘導が、一番の景観戦略になるのではないかと思う。さらに、いいものができたら表彰する」とする。「たとえば、工場の移転で空き地になった広大な跡地で再開発する際に、ゆったりとした敷地に多様な緑を配置し、快適で活気ある空間を創造するとともに最先端のデザインの建物を建てる」というかたちだ。

 こうした方向を具体化するための市独自の施策として、1981年に「川崎市都心アーバンデザイン基本計画」を策定し、都市部のデザインコントロールを開始。さらに、「市と市民が協働して行う、次代に誇れる魅力ある川崎らしさの発見と創造」を基本理念とする「川崎市都市景観条例」を95年度に施行し、これに基づき都市景観マスタープランとなる「川崎市都市景観形成基本計画」(95年度策定)、「臨海部色彩ガイドライン」(96年度策定)、「川崎市都市景観形成協力者表彰」などを進めてきている。

 都市景観条例は、都市景観の形成を促進する地区を指定し、地区の関係住民が設立する景観形成協議会と市との協議を経て景観形成の方針と基準を決める「都市景観形成地区」や「大規模建築物等の届け出」「景観づくり市民団体など市民活動支援」のしくみを備えている。

 都市景観形成基本計画は、2005年度から見直し作業に着手、さらに、景観法による景観計画も策定することにしている。また、都市景観形成協力者表彰では2005年度までに46件の企業や団体を表彰した。

■新都心を具体化「新百合ヶ丘周辺」
 こうした施策は、「川崎駅周辺、とくに西口のミューザ川崎は、新しい都市景観形成のコンセプトにあったものになっていると思う。また、新百合ヶ丘駅周辺では、土地区画整理事業とセットにして景観に配慮した新都心づくりを進めた。緑をたくさん取り込んで、川崎市の北部としては自慢できる景観になっている」として具現化。「新百合ヶ丘周辺」は都市景観大賞(建設大臣表彰)、日本都市計画学会賞(都市計画賞)などを受賞、「ミューザ川崎」も神奈川建築コンクールで優秀賞に輝いている。

 一方、自然景観としては「多摩丘陵の面影を残す津田山から東高根森林公園は、自然豊かな地域で自慢できる。それから、江戸時代からの二ケ領用水などもある」。このほかに2005年度には旧街道の歴史を生かした住民主体のまちづくりの実現を目指す「大山街道景観形成地区方針・基準」を告示している。

 さらに「多摩川を1つの景観軸にみたてて、市民が活動できる場所としての計画的整備も考えている。多摩川と、川崎の市街地と多摩丘陵をセットで考える、スケールの大きな構想」だそうだ。

2006年4月4日付『建設通信新聞』より

新しい景観をつくっていく
時代になった
川崎市長 阿部孝夫
神奈川建築コンクールで優秀賞に輝いた「ミューザ川崎」。駅西口に位置し、市の掲げる新しい都市景観形成のコンセプトにあったものになっている
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