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私の景観論

 備前焼で名高い岡山県備前市は、青く輝く瀬戸内海と小高い山々に囲まれた文化都市。備前焼の里・伊部いんべやわが国最初の庶民学校で国宝に指定されている閑谷学校、瀬戸内海国立公園、八塔寺ふるさと村など日本人の素朴な心のふるさとを感じさせる味わい豊かな街だ。「景観づくりとは見た目きれいプラス清潔きれいの2つの要素が必要」が持論の西岡憲康市長は、まず環境分野での取り組みから手がけ、将来的にも地域開発と景観保全とが調和したまちづくりを見据えている。

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 備前市は昨年3月、海沿いの日生ひなせ町、山間の吉永町と合併し新「備前市」として新たなスタートを切った。

 景観づくりで岡山に代表されるものでは倉敷の美観地区がある。備前、日生、吉永3つのエリアの中で備前は倉敷型のまちづくりを進めているという。全国から愛好家の訪問が後を絶たない焼物の里・伊部では、駅前にポケット広場を整備している。「周辺には備前焼の窯やショップが建ち並び、これらと一体的な小型美観地区をめざしている」

 日生エリアには、瀬戸内海国立公園日生諸島がある。基本的に国有林には手をつけることはできないが、島の3割が開発可能な民有地であることから、日生本土と島を結ぶ道路などのインフラ整備を進め、これまでに鹿久居島と頭島を結ぶ頭島大橋が竣工している。みかん狩りや観光底引き網、島巡り遊覧、海水浴などの観光にも役立っている。

 一方、北部の吉永エリアでは、標高400mの高原に開ける八塔寺ふるさと村が広がっている。高野山に並ぶほど仏教が栄えたこの村も、今では十数戸の茅葺民家と寺院がシンボル的存在として残り、その歴史がほのかに漂っている。この景観を守るため市独自の「八塔寺ふるさと村景観修景事業補助金」制度を設け、茅葺屋根の葺き替えを補助している。

■地域開発と景観保全を調和させる
 西岡市長は「地域開発と景観保全は相対するものではない。2つの側面を調和させることが大切だ」と語る。各エリアで人為的な景観を取り入れた街、自然景観を保全する街、両面を取り入れた街と上手くバランスがとれており、それぞれの特色に合わせたまちづくりを進めている。

 新たな取り組みでは、ストックしていたふるさと創生資金の一部を活用して、桜、紅葉、椿を植樹する「市民ふるさとの森創造事業」創設のための予算を計上した。ボランティアおよび市内小学6年生を対象に約2000本の植樹を考えている。小学生を加えた背景には「1市2町が一緒になったことへの意識を持ってもらいたい」という願いもある。

 新市長就任時に公約として掲げた「ダイナミックなまちづくり」。その第一歩として環境分野の取り組みに力を注いでいる。「20世紀の産業革命以降、生産性をあげるために攻め続けてきた経緯がある。人間に例えると動脈ばかり追求してきた。これに対して環境は静脈産業といえる」。動脈産業に匹敵するほどの重要性を持つ静脈産業を大切にすることで循環を良くしていこうという発想だ。

■静脈産業なる環境に率先し取り組む
 環境省が進めるまほろば事業のモデル地域に備前市が選定されている。CO2削減などにつながる事業に2005年度から3年間、交付金が交付される。まずは庁舎の電力消費量削減から始めた。老人ホームや小中学校でのストーブや温水プール、体育館の大規模暖房にペレット(おがくずなどを固めた木質燃料)を採用することを検討している。「役所が率先して取り組むことで、一般家庭や民間施設などにもつながっていく」ことを期待する。

 西岡市長は、備前市の魅力のひとつとして日生の海をあげる。同市は海の恵み「かき」の産地でもある。この海の町で岡山県の職員グループが考案した「かきおこ」(かき入りのお好み焼き)がちょっとしたブームになっている。積極的なPR活動もあり、「多くの人が訪れてくれている。休日は渋滞でなかなか行けないほど。地域興しのひとつの良い事例だ」と笑う。自然とともにありたいとするまちづくりへの姿勢が多くの人を惹き付けている。

2006年3月27日付『建設通信新聞』より

見た目+清潔きれい
の2要素が必要
備前市長 西岡憲康
日本人の素朴な心のふるさとを感じさせる「八塔寺ふるさと村」
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