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私の景観論

 ことしで市制施行50周年を迎える大阪府箕面市。自然豊かで静かな高級住宅地というイメージも強いが、一方で、箕面新都心の箕面マーケットパーク「ヴィソラ」が開業し、水と緑の健康都市や国道423号バイパスの整備が進むなど、市内では新規開発も進んでいる。今後、新旧が混在する中で、いかに環境と開発行政の舵取りをしていくかが注目される。藤沢純一市長に今後めざしていくまちづくりや景観への取り組みについて聞いた。

◇     ◇

 1956年に箕面町と豊川村が合併して誕生した箕面市の人口は、2006年1月末で約12万7000人。「現在も人口が増加している大阪府内では数少ない市」というように住まう街としての人気は高い。

 その人気は美しい山並と景観、自然を持ち、広大な敷地の宅地開発が進められてきたことによるものだが、もちろんこれは行政の取り組みの賜でもある。

 同市は、「早い段階から条例により市街化区域における人口密度規制などを行い、良好な住宅形成に努めて」きた歴史がある。

 また、市街化調整区域においても建築形態規制などにより無秩序な市街化の抑制にも努めている。

■市民生活の中からまち、景観づくり
 箕面市の景観づくりのベースには「まちや景観は、市民が生活の中で作っていくもの」という意識が強い。「時代の変化にあわせて市政も軌道修正が必要。景観についても、市民自らが考えてこそ血の通ったものになり、コミュニティの形成やまちづくりが促進される」と述べる。

 市長就任後、さまざまな分野で市民の声を反映させるための組織を設置しており、景観についても、05年度に一般公募した市民で構成する「暮らしの景観研究会」を立ち上げた。

 さらに、景観法に基づく景観計画案策定に向け、市民や民間事業者、学識経験者、行政関係者らで構成する景観計画検討会議もスタートさせており、市民との協働作業による新たな計画づくりの成果が注目される。

 藤沢市長が、市民の声を反映できる理想の姿と思い描くのはコンパクト・シティ、コンパクト・タウン。「ヨーロッパの国々の基礎自治体は1万人未満のケースが多い」と例を挙げ、「箕面市は人口12万7000人に対して13小学校区がある。ボリューム的には校区ごとのクラスター形成を図り、予算を配分できれば固有の景観づくりが進むのでは」と語る。

 今後、クラスター単位の地域の声と市全体としての施策のバランスをとっていくことが重要になるが、「これまで毎月、市民と市長の地域対話集会を催してきた。新年度からは、職員が各地域に出向く出前説明会を実施していく」というように、市民と行政の距離を近付ける努力も忘れていない。

 同市は97年に景観条例を定めているが、景観法の施行に対応して05年度、06年度で景観法に基づく景観計画案を作成し、07年度には計画実施に向けた条例案作成作業を進める考えだ。順調なら08年度から景観条例を施行することになる。

■魅力あるスポットつなぐ動線が必要
 落ち着いた住宅街だけでなく、紅葉期の箕面大滝、旧西国街道などの観光名所も有名だが、ほかにも「滝への遊歩道にある龍安寺、箕面市立病院の屋上から北側の水田と山を望む眺望、才ケ原線の桜の木のトンネル、西江寺上の聖天展望台からの市内の眺め」などの美しい景観を持つ。

 さらに、新しいスポットとしても箕面新都心に箕面マーケットパーク「ヴィソラ」が誕生し、「点としてはいいものがあるのに、これらを有機的に繋ぐ動線がない」ことが課題と認識している。

 新規開発では水と緑の健康都市とそれに伴う国道423号バイパスが着々と進んでおり、千里中央と箕面新都心を結ぶ北大阪急行線延伸構想も具体化に向け動き出した。長年の懸案だった北大阪急行線延伸については、「ぜひ、実現させたい」と意気込みを見せる。

 「市長とはコンダクター」と役割定義する藤沢市長は、旧来のまちと新規開発、市民と行政の間に立ってタクトを振る。

2006年3月13日付『建設通信新聞』より

理想はコンパクト・シティ、
コンパクト・タウン
箕面市長 藤沢純一
市内有数の桜の名所、市道才ケ原線。大樹がつくるトンネルは華やぎと憩いをもたらし長く市民に親しまれている
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