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江戸の面影が漂う「小江戸」と呼ばれる街並みが、埼玉県川越市に残っている。蔵造り商家が並ぶ「一番街」や市のシンボルとされる「時の鐘」周辺は、私鉄2線とJRで都心と直結する地の利を生かし、昨年1年間で494万人の観光客を呼び込んだ。舟橋功一市長は「伝統的な建物を保存しながら、歴史を生かして活性化し、新しい時代に向けた都市づくり」に取り組んでいる。 ◇ ◇ 川越の景観づくりは「戦災にあわずに残った、蔵造りを主体とした古い街並みの保存が最初の目的だった」と振り返る。商店主や住民との対話の末、1999年に国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)の選定を受けたことで「伝統的な建築を維持でき、将来にわたって観光客を誘致できる」との展望を描いた。 ■観光客を年間1000万人に 毎年秋には、20台以上の山車を出す川越まつりが開かれ、「国の重要無形民俗文化財の指定も追い風となり、お客さんが来るキーポイントになっている」という。江戸天下祭りをいまに受け継ぐ絢爛豪華な山車が、古い街並みに映える。「かつて髷を結い、刀を差して歩いていた同じ道に、山車を曳きまわす。人形を載せた背の高い山車も、電線類を地中化した道だから通ることができる」というわけだ。祭りの後の11、12月でも、駄菓子が人気の『菓子屋横丁』を始め客足は途絶えることなく、来客数倍増の兆しを感じている。 ■福祉、環境、歴史生かし街を活性 かつて川越藩は、川越街道と舟運の大量輸送で栄えた徳川幕府の北西の守りの要だった。「九里四里(栗より)うまい十三里」とは、日本橋までの十三里を運んだサツマイモの売り口上。現在では人口33万3000人を有し、埼玉県で初めて中核市として指定されている。小樽、函館、熱海、金沢、長浜、彦根、尾道、倉敷、そして川越の全国9市で結成した「知恵のまちづくり全国都市フォーラム」では「単に古い街というだけでなく、環境などに力を入れた新しいまちづくりを研究している」という。 市庁舎では、1996年度に全国に先駆けて1%節電運動に取り組み、95年度比で5%の節電に成功。昨年脚光を浴びた「クールビズ」も、既に10年前から取り組んでいる元祖。また、昨年の大河ドラマ『義経』では源義経の正妻ゆかりの地として紹介され、ことしは自動車に「川越」ナンバーが誕生するなど、知名度向上の要因が続く。 「市民が『いいところに住んでいますね』といわれるような、福祉充実、住みよい環境、歴史生かした活性化のまちづくりを進める」と語る。 2006年2月13日付『建設通信新聞』より
「古い街」踏まえ
新しい時代築く
川越市長 舟橋巧一氏
『時の鐘』は350年間、時を告げてきた川越のシンボル。いまも1日4回、蔵の街に鐘の音が響く。現在の鐘楼は、1893年の焼失後に再建
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