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私の景観論

 海に開かれたアジアの交流拠点都市として着実に成長し続け、アジアの一極をなす都市を目指した取り組みを進めている福岡市。人口は140万人を超え、多様な都市機能が集中する大都市でありながら、身近に恵まれた自然をもち、2000年の歴史に育まれた伝統・文化、歴史遺産なども輝きを見せる。福岡で育ち、福岡の街とともに歩み続ける山崎広太郎市長に、都市の景観づくりに対する取り組みを聞いた。

◇     ◇

■都市景観賞継続が大きな財産になる
 福岡の景観づくりに大きな功績を果たしてきたものに福岡市都市景観賞がある。1987年に創設され、今年で19回目を迎えた同賞は、個性的で魅力的な景観づくりに役立つ建物や街並み、モニュメントなどの一般表彰に加え、すぐれた都市景観の創出、自然や歴史的景観の保全につながる企画や活動などに対する特別表彰も行う。「(この賞を)引き継いできたことが大きな財産になっている。われわれ行政も景観という視点から街づくりを考え、民間の方も魅力ある建築物をつくろうという意識が高まる。そうしたものが形になって現れてきている」とその意義を強調する。「表彰するものがなくなるのではと心配したこともあった」そうだが、今回も300点近くの物件が推薦されるなど、全国有数の推薦数を誇る。「表彰されて改めて気づく街の景観もある。取り上げるものはまだまだ多い」という。

 市民の参加も目に見えるようになってきた。路上の違反広告物を撤去するボランティアの登録員は5400人を超え、まちなみのルールづくり支援センターの設置などにより建築協定や地区計画など住民発意のルールづくりの支援も進んでいる。

 「落書きを消す、ゴミを拾う、ピンクチラシを除去するなど多くの活動が市民にひろがっている。美しい街をつくるという意識はさらに高まっている」。住む人、使う人が参加して初めて都市の景観として定着し、成熟していくのだという。

 12月最初の日曜日、恒例の福岡国際マラソンが開催された。「美しい部分も多いが、配慮に欠けている部分もある。コース全体を景観区域に指定してはどうだろうか」と、選手を追う目も自然と街並みの方に向く。

 「福岡に帰って来る時、飛行機から見える海の中道から能古島、博多湾、福岡市街地へと続く景色に大きな魅力を感じている」という。博多湾をすっぽりと抱き、背後には油山、立花山といった自然豊かな山々が連なる。「都市の身近に自然環境を感じることができる。これが景観づくりの大きな動機付けになっている」と指摘する。

■歴史残る街並み民間の力で活気
 一方で「都心部でありながら日本最古の禅寺・聖福寺など数多くの寺社や約400年前の太閤町割りなど博多の歴史を感じさせる街並みが残る御供所地区、多くの観光客や買い物客で賑わうキャナルシティ、若者に人気のまち・大名など民間の力で生み出された活気あふれる景観」も魅力の一つにあげる。

 市のプロジェクトとして今もっとも力をいれているのが博多湾に浮かぶ400haの埋立地“アイランドシティ”。「この9月から11月にかけて都市緑化フェアを開催し、100万人を超える人に足を運んでいただいた。まち開きの意味合いも含め非常に高い評価を受けました」と振り返る。緑豊かな“生きる力を呼び覚ますまち”をコンセプトに整備が進む約1500戸の住宅整備“照葉のまち”も人気が高く「新しい都市として大事に育てていきたい」という。

 コンテナふ頭はフル稼働状態で港湾機能も大きな活気を生んでいる。“照葉のまち”周辺ではアジアビジネス特区を活用したアジアビジネスの拠点づくりの構想も進む。「福岡が日本を含めたアジアの中でより大きな役割を果たす都市という位置付けのもと、アジアの人も自由に快適に生活できる条件を備えた地区として医療・福祉・教育など新しい空間づくりを進める」

 「アイランドシティは時間をかければかけるほど評価は高まる。高い理念をもってじっくりと取り組むことでその価値を高めていきたい」と意気込みを語った。

2005年12月19日付『建設通信新聞』より

高い理念、
アイランドシティの価値高める
福岡市長 山崎広太郎
建築家・伊東豊雄氏の設計による“ぐりんぐりん”。アイランドシティ中央公園に建つ緑に被われた丘をイメージした建物は、新しい都市のシンボルとなる
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