美し国づくり景観大賞マーク

第1回美し国づくり景観大賞エントリー
美し国づくり景観大賞マーク

長井市かわまちづくり

山形県長井市
団体名

山形県長井市

目的

かわとまちをつなぎ、賑わい・憩いの場を創出し、観光利用の促進を図る。

地域の概況

長井市は、最上川、置賜白川、置賜野川の3河川に囲まれた「水のまち」であり、かつては「最上川舟運」の港町として栄えた商工業都市として、日本海に面した酒田港から米沢藩へと物資を運んだ舟運ルートの終着港であった。現在でもまちなかには当時の水路網が形成されており、舟運で栄えた商家跡が多数現存するなど、最上川との関わりが今も色濃く残されているまちとなっている。そのため、これまでも水をテーマとした河川公園や水辺を歩いて楽しむことを目的としたフットパスの整備等を行い、観光協会や商工会議所などに加え、NPO や市民団体などが参画し、河川でのイベントや祭りなど、市民参加型の行事を多数開催し、市民の憩いの場として利用されている。

情報

範囲
山形県長井市
規模
4.4ha
開始時期
平成21年4月1日~
実施期間
6箇年
景観法等の適用状況
長井市では、長井市全域に景観条例を指定しており、平成27年7月より重要文化的景観区域に最上川区域も指定される予定。本取組みにおいても長井らしい景観の保全に努め、整備箇所の緑化を行うなど制度に適用した取組みを行っている。

経緯

平成15 年、英国のフットパスを最上川沿いに作りたいという思いから、長井市の白川沿いにモデルコースを整備されたのがフットパスの始まりとなる。その後、最上川と市街地を結ぶルートの検討やワークショップなどの活動をしていた市民の皆様を中心に、フットパスルートの選定や、案内標識・ガイドマップの作成等がなされ、フットパスは市民の散歩コース、小中学校の野外授業や親子行事にも利用されるなど活用が進んだ。そういった活用が進むうちに平成20年度に東京都町田市、山梨県甲州市、北海道黒松内町と長井市が発起人となり、「日本フットパス協会」が設立され、フットパスの取り組みが全国で盛んにおこなわれるようになった。平成21年度には国交省の支援事業である「かわまちづくり支援制度」を活用し、「長井地区かわまちづくり計画」を策定し、認定を受けた。「かわからまちへ、まちからかわへ」をコンセプトに、舟運時代の歴史・文化や最上川の自然など、地域資源を活かした魅力的なかわまち空間の形成を行っているところである。かわまちづくりでは、最上川河川敷内に地域の特色に合うような舟通し水路の整備や、自然に馴染むフットパスコースの整備、かわとまちを結ぶ坂路や階段を国の整備として整備をいただいた。まちなかにおいては、コミュニティ歩道の整備や案内看板や水路の整備などを長井市で整備することでかわとまちの結び付きを強くしている。これらの整備に伴い、市民団体によるフットパスを軸とするかわとまちを結ぶ空間利用が進み、地域活性化に寄与している。

景観の創生、再生の取組み前の景観状況

  • 最上川左岸河川敷の舟通し水路整備前の状況
    最上川左岸河川敷の舟通し水路整備前の状況

長井市は、最上川舟運の終着港として栄えたまちであり、まちづくりを進める上で重要なコンセプトの一つと考えられるが、整備前の状況は、その面影が感じられず古の歴史が忘れられつつある状況となっており、まちの魅力を感じられる川辺となっていない状況であった。また、最上川本川には堰があり、カヌーやボートによる通行が不可能であった。本川に流れ込む水路についても見た目や安全性の観点から人が集まる魅力に欠けていた。更に、河川沿いの散歩道としてフットパスの利用がされていたが、夏の時期には葦等が生い茂り、良質な景観とは言い難い状況であった。

景観の創生、再生の取組みによる現在の景観状況

  • 舟通し水路でのカヌー利用の様子
    舟通し水路でのカヌー利用の様子

かつて米沢藩の舟運基地として栄えた船着場をイメージして舟通し水路が整備され、当時の繁栄を紹介した歴史案内看板も設置された。これによりカヌーやボートの通行が可能となり、水に親しめる空間となった。また、周辺の自然環境とマッチした景観が形成され、まちなかの歴史ある商家跡などとも連動した歴史的な空間として、フットパス愛好者が集う場所となっている。現在、同箇所に四阿の設置工事が行われており、完成すれば、憩いの場としての活用がより一層期待される。

取組み地域の位置図及び写真の撮影位置・方向

ビフォー・アフターに見る景観向上の成果のアピール点

かつて米沢藩の舟運基地として栄えた船着場をイメージした舟通し水路の整備、河川空間の散策を安全に利用できるフットパスの整備により、まちなかに数多く現存する歴史ある建物と河川空間を結び、かわとまちが連動した観光資源として利活用が図られている。その活用としては、「フットパスウォーク」やJR と連携した「まち歩き」など市内外から多くの参加をいただくイベントを実施している。イベント時には観光ボランティアガイドによる温かなガイドにより参加者に好評をいただいている。整備に関しては、観光協会や商工会議所のほか、NPO や各種市民団体による「長井市かわまちづくり推進協議会」を設置し、整備の方針や、今後の利活用に向けて計画が立案され、住民と国、市が一体となって検討されており、より住民目線の事業となっている。このことにより、地域活性化に直結した事業となっているほか、住民によるクリーンアップ活動が行われるなど地域の方々に親しまれる場所となっている。

景観の創生、再生の取組みの特色・工夫

かつて長井市で栄えた舟運文化を辿るフットパスコースを設定し、当時を偲ばせる歴史的な商家跡や街中に流れる水路沿いを歩くことができるよう工夫している。また、年に1回「フットパスウォーク」というイベントを実施することで、地域住民に日頃から親しまれ、地域住民が主体的に長井をPRし、地域資源として活用できるよう取り組んでいる。

  • かつての舟運文化を偲ばせる川沿いの小道を歩くフットパスイベント参加者の皆さん
    かつての舟運文化を偲ばせる川沿いの小道を歩くフットパスイベント参加者の皆さん

景観の創生、再生の取組みによる波及効果

整備された箇所の活用として、JR と連携した「まち歩き」が開催され、主に市外からの観光客が多く長井市を訪れている。また、イベント時のみならず、地域の皆様の憩いの場として利用されるようNPOなどが中心となってフットパスガイドマップが発行され、観光ボランティアガイドと合わせて、訪れた観光客の受け入れ体制も拡充している。フットパスを歩く際に地域の食の振る舞いとして長井名物の馬肉チャーシューをる舞ったところ、多くの方が帰り際に長井の精肉店で買で買い物をして帰られたり、コース沿いの酒造店で試飲を行うことで購買に繋がったりと少しずつだが、経済的効果を生まれている。

  • フットパスイベント時の案内人の様子
    フットパスイベント時の案内人の様子
  • 酒造店での試飲の様子
    酒造店での試飲の様子

今後の取組み

長井市の観光の拠点として、「かわと道の駅(仮称)」の整備が予定されている。市内のお店や観光スポットへの案内として観光案内人が常駐するほか、観光物産の販売や市内の経済団体や商店街、NPOなどがその時々に応じて魅力を発信していく交流の場として機能する予定。また、河川沿いに整備することにより、河川敷のフットパスへの玄関口としての役割も担っており、更なる地域活性化が期待できる。