美し国づくり景観大賞マーク

第1回美し国づくり景観大賞大賞受賞
美し国づくり景観大賞マーク

水辺風景の再生
「水・緑、ともに生きる豊かな暮らし」

江戸川区
第1回美し国づくり景観大賞大賞【大賞受賞】

東京都江戸川区/多田正見区長

江戸川区

「美し国づくり景観大賞」 審査評

江戸期以来の420㎞に及ぶ河川や水路がはりめぐらされた田園地帯であったが、昭和30年代後半から都市化がすすみ、かつての清流はドブ川と化した。 そこで江戸川区は「ゆたかな心 地にみどり」を合言葉として『環境をよくする10年計画』(昭和46年)を開始。つづいて『区内河川整備計画(親水計画)』(昭和47年)、その後全国に影響を与えた日本初の「古川親水公園」の整備を昭和48年に完成、以降5路線の親水公園、18路線の親水緑道をはじめ総延長27kmに及ぶ水と緑のネットワークを形成した。さらに、『景観基本計画』(平成23年景観行政団体)、『みどりの基本計画-水と緑とともに生きる豊かな暮らし』(平成25年)を大車輪で推進。その一方、区民参加のまちづくり推進のために『アダプト制度』(平成17年)をすすめ「アダプト活動交流会」や「景観まちづくりワークショップ」、「えどがわ百景推進協議会」など市民との協働活動を全区的に展開。日常的な花や緑の手入れなどは、ほとんど区民ボランティアによる活発な活動によっている。こうして東京都で5番目の大面積50平方キロに70万近い人口を擁する高密市街地の江戸川区が、半世紀ちかい長い年月、区と区民協働の水と緑と花のある風景を創り育て、夏になるとすべての親水公園で子供たちの元気な姿をみることができる子育て一番の都市生活の舞台になった。東京湾に面し、大河川の江戸川や荒川、中川に囲まれた沖積平野は、水の都でもあったが水害との闘いの連続でもあった。そうした危険な土地を安全安心にかえ、さらにはかつてのドブ川を緑豊かな親水公園に再生し、公共緑地の少ない連担市街地に緑道を創出し、しかもいまでは全区的スケールで15000本のサクラ植樹を進め、「えどがわ百景」選定によって再発見した江戸朝顔や江戸野菜、江戸切子など伝統技術と歴史景観を保存するなどの取り組みが、近年、映画のロケ場所になるまでに、江戸情緒を回復しつつある。地味ながら営々として築いてきた水辺の再生、みどりと花の風景の創出。それら風景の、巨大都市・東京ではめずらしい区民ボランテイアによる主体的かつ持続的サポートなど、そのすべてを高く評価したい。人々の日々の元気なくらしの風景が、豊かな景観づくりの証しであることを実践で示したことは、今後、わが国美し国づくり運動最良のモデルとなるだろう。

目的

区民とのパートナーシップのもと、「水・緑、ともに生きる豊かな暮らし」の実現を目指し、水と緑豊かな魅力あるまちづくりを進めることを目的とします。

地域の概況

江戸川区は、親水公園や親水緑道、親水河川、葛西臨海公園などの水辺空間が充実しています。また、荒川・江戸川という大河川に囲まれ、水の恵みを身近に感じることのできる環境が最大の特長です。区ではこれまで、土地区画整理事業や下水道事業など都市基盤整備とともに、区民の暮らしに密着した多くの環境資源を整えた結果、「水と緑豊かなまちづくり」が進み、親水公園は「愛する会」が発足するなど、区民の皆さんが様々な活動を展開し、地域コミュニティの醸成につながっています。

情報

範囲
江戸川区内全域
規模
親水公園5公園・親水緑道18路線、総延長約27キロ
開始時期
昭和46年12月
実施期間
44箇年
景観法等の適用状況
平成16年に景観法が施行され、江戸川区においても、平成18年12月に全国に先駆けて、「一之江境川親水公園沿線景観地区」を指定し、景観まちづくりを進めました。 その後、区内全域で景観まちづくりを進めていくため、平成20年より景観法に基づく景観計画づくりを始め、「江戸川区街づくり基本プラン(都市マスタープラン)」の意思を引き継ぎ、緑のマスタープランである「水と緑の行動指針(緑の基本計画)」との整合を図り、江戸川区の特徴である水と緑に育まれた良好な景観を守り育てるため、策定しました。「江戸川区景観計画」は、背景である建築物等の規制誘導による景観まちづくりと、区民主体の景観まちづくりである環境資源を活用した様々な活動の展開とのボトムアップによる景観まちづくりの二本柱を主としています。 また、区は区内全域でまちの魅力をさらに高めるとともに、江戸川区景観計画の運用を行っていくため、平成23年1月16日江戸川区は、景観行政団体となりました。

経緯

かつて、都内有数の田園地帯であった江戸川区には420kmに及ぶ河川や水路が区内を流れていました。長い間、田園地帯の農業用水として活用されてきた水路の流れにも、昭和30年代後半になると都市化の波が押し寄せ、いつしか生活排水路となり、かつての清流はドブ川と化しました。区では昭和46年に「環境をよくする10年計画」を策定し、「ゆたかな心 地にみどり」を合言葉に掲げ、街の美化・浄化運動・緑化運動を中心に、区民とともに手を携えながら本区を脅かす様々な環境問題からまちを守る活動を始めました。また、モータリゼーションの流れの中で、河川や水路を埋め立てる計画があがりましたが、区民から「昔から親しんできた川が消えるのは耐えられない」と埋め立てに反対する声が上がりました。このような区民の強い思いを受け、区は昭和47年「江戸川区内河川整備計画(親水計画)」を策定、この親水計画の第1号として、昭和48年に日本で初めての親水公園である「古川親水公園」が誕生し、現在では5路線の親水公園と18路線の親水緑道が整備され、総延長約27 kmに及ぶ「水と緑のネットワーク」が形成されています。区では平成25年4月に「江戸川区みどりの基本計画」を新たに策定し「水・緑、ともに生きる豊かな暮らし」を掲げ、水と緑豊かな魅力あるまちづくりを進めています。

景観の創生、再生の取組み前の景観状況
古川親水公園

古川は、かつては行徳の塩を江戸に運んでいた由緒ある水路。都市化により雑排水路となり、昭和39年(1964年)には埋め立を計画。ところが、水害や悪臭に苦しんだはずの沿線住民から「ぜひ、古川を残して欲しい」という強い要望があり、埋め立計画は中止され懸案となった。そして、昭和47年(1974年)「江戸川区内河川整備計画(親水計画)」に基づいて、緑と清流の河川として復活、親水公園第1号となる。

  • 古川整備前_1972_12
    古川整備前_1972_12
  • 古川親水整備前
    古川親水整備前

1960年代頃の古川
昭和30年代後半(1965年頃~)から都市への人口集中、急激な宅地開発などにより、水路や中小河川には住宅や工場の排水などが流れ、ゴミ捨場になるなど、かつての清流はドブ川と化した。都市化の波による環境破壊

整備後の古川親水公園

  • 古川まつり
    古川まつり

現在の古川親水公園
子どもたちの絶好の遊び場として、また、毎日の通勤・通学路としての利用、散策・ウォーキングなど、日常の生活に欠かせない存在となっている。

整備前の小松川境川親水公園

2番目の親水公園となった小松川境川親水公園は、「よみがえる清流」をテーマに都市における理想的な自然環境を創出。子どもたちに安心して水遊びをさせたいという区民の強い要望を受けて、新中川の水を浄化して流している。さらに、水深を浅くし、流れに入りやすい州浜や登れる滝、水面を渡る飛び石などを設け、思う存分水遊びができるよう整備した。

  • 小松川境川整備前
    小松川境川整備前
  • 小松川境川整備前
    小松川境川整備前

1960年代頃の小松川境川
昭和30年代後半(1965年頃~)から都市への人口集中、急激な宅地開発などにより、水路や中小河川には住宅や工場の排水などが流れ、ゴミ捨場になるなど、かつての清流はドブ川と化した。

整備後の小松川境川親水公園

  • 小松川境川整備後
    小松川境川整備後

現在の小松川境川親水公園
水遊びをする子どもたちの表情はとても生き生きとし、昔、田園風景の中で遊んだ子どもたちと同じものである。

整備前の新川(新川千本桜)

新川の護岸の耐震化に併せて遊歩道に桜を植栽し、かつて「塩の道」と言われた歴史ある新川を江戸情緒あふれる街並みとして整備。現在は、都市空間の中の貴重な水辺としてとして活用されている。

  • 新川家族
    新川家族
  • 新川暴風雨
    新川暴風雨
  • 新川整備前
    新川整備前

1960年代頃の新川
大河川や海に囲まれた低地のため、洪水や高潮などの水害にたびたび見舞われた。

整備後の新川(新川千本桜)

  • 新川
    新川
  • 新川千本桜まつり(地域活性化)
    新川千本桜まつり(地域活性化)

沿川を江戸情緒あふれる街並みとして整備し、「新川をまちの誇りとして次世代に継承していきたい」と願う地域の皆さんが「新川千本桜の会」を結成、桜の植栽寄付やイベントを開催し、新しい桜の名所づくりを進めている。

取組み地域の位置図及び写真の撮影位置・方向

ビフォー・アフターに見る景観向上の成果のアピール点

江戸川区の環境資源は、そこで育った子どもたちと共に、既に30年が経過し、次世代にその共通の財産として引き継がれ、守り活用されています。特に現在は、耐震護岸の整備と共に、沿川を江戸情緒あふれる街並みとして整備する新川千本桜事業(26年度完成予定)を進めており、「新川をまちの誇りとして次世代に継承していきたい」と願う地域の皆さんが「新川千本桜の会」を結成、桜の植栽寄付やイベントを開催し、新しい桜の名所づくりを進めています。また、これまでの成果として、受賞歴のとおり区民とのパートナーシップによる数多くの表彰を受賞したことがその証として刻まれています。

景観の創生、再生の取組みの特色・工夫

区では、江戸川らしい景観について区民のより一層の理解と促進を図るため、以下の取組みを行っています。
(1)アダプト制度の推進及びアダプト活動交流会の開催
(2)景観まちづくりワークショップの開催
(3)景観まちづくり賞の表彰
(4)えどがわ百景のPR

  • アダプト活動交流会の開催
    アダプト活動交流会の開催
  • 景観まちづくりワークショップの開催
    景観まちづくりワークショップの開催
  • 景観まちづくり賞募集案内
    景観まちづくり賞募集案内

景観の創生、再生の取組みによる波及効果

現在、親水公園・親水緑道はじめとした環境資源は、四季折々の自然を感じられる散歩道として地域の住民に活用されているだけでなく、水遊びや魚捕り・自然観察など、その利用は多岐に渡り、地域住民には日常の生活に欠かせない存在となりました。また、活動規模も個人的なレベルのものから、施設全体を対象にした「愛する会」のような大きな組織を設立する活動が見られ、親水公園・親水緑道は自分達のそして地域の財産として、子々孫々にまでよき財産として残し、引き継いでいきたいとの自発的な思いが芽生えています。こうした活動は、大人だけに限らず、子ども達も含めた世代を超えた広がりを見せています。

  • イベントの開催(古川まつり)々
    イベントの開催(古川まつり)
  • 親水公園の早朝清掃
    親水公園の早朝清掃
  • 花壇づくり(新中川辰巳新橋)
    花壇づくり(新中川辰巳新橋)
  • イベントの開催(新川千本桜まつり<お花見和船>)
    イベントの開催(新川千本桜まつり<お花見和船>)

今後の取組み

江戸川区の特長である水辺空間の更なる利用促進や水辺景観向上のため、以下の取組みを進めます。
(1)水と緑のパートナーシップの充実
(2)水と緑のネットワークの充実
(3)水辺環境の保全及び利活用の促進